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福岡県地域史料データベースについて

 福岡県域で編纂された近世の地誌として、福岡藩では、貝原益軒・好古編『筑前国続風土記』(宝永6年[1709]完成)、加藤一純・鷹取周成編『筑前国続風土記附録』(寛政10年[1798]成立)、青柳種信編『筑前国続風土記拾遺』(天保8年[1827]頃成立)の「筑前三大地誌」の他、かつての大宰府管内九国二島(現在の九州地方全域)におよぶ伊藤常足編『太宰管内志』(天保12年[1841]成立)があり、久留米藩では、矢野一貞編『筑後将士軍談』(嘉永6年[1853]自序)、西以三編『筑後地鑑』(天和2年[1682]成立)、柳川藩では、戸次求馬(親敷)編『南筑明覧』(明和2年[1765]成立)、豊前国では、渡辺重春編『豊前志』(文久3年[1863]成立)などがあります。

 これらの地誌は近世に成立したものですが、現地での伝承の取材や古文書の調査などにより、中世以前の貴重な情報を記録していることが多いものです。地域の古代・中世の情報は、原文書にしても、編纂された史書にしても、同時代ないし近い時代の史料は多くが失われており、不明なことがたくさんあります。したがって、当館においても、これら近世の地誌の情報を、九州の寺社シリーズの調査や中近世城館の調査、また古代大宰府の調査などに活用してきました。

 地誌の多くは活字化されて、地域史の研究に活用されていますが、大半は印刷物の形態であり、広く利用しやすいデータベースとして研究資源化はされていません。したがって同一の歴史事象や寺社、城館、人物等の情報を収集しようとすれば、複数の地誌を博捜する必要があり、研究の効率化を阻んでいます。

 畿内の寺社や朝廷、幕府など日本列島の政権中枢の情報については、東京大学史料編纂所のデータベースにより、様々な横断検索が可能となっており、歴史研究の上で欠かせないものとなっています。福岡県の近世地誌についても、このようなデータベースを構築して研究資源化すれば、地域史研究を進展させる上で、計り知れない効果をもたらすことができます。

 このような当該地域の古代・中世史についての総合的なデータベースは存在しておらず、このデータベースが構築されることによって、今までは関連付けられていなかった記録どうしを関連付けて考察しうる可能性が開けるのであり、福岡県の地域史研究をさらに推進することが可能となります。

 この問題を解決するため、まずは福岡県域のうち、福岡藩が編纂した筑前国の地誌をデータベースとして研究資源化し、個々のフルテキスト検索を可能にすることはもちろん、フルテキスト化した地誌を横断検索できるようにし、地域史研究にあたって、必要な情報を容易に参照可能とすることを目指すこととしました。これによって地域史研究の基盤を創設するとともに、福岡藩が連綿と行った地誌編纂事業の相互関係を明確にし、これを事例として、近世における地誌編纂事業の歴史的意義を明らかにすることも目的とします。

 上記の目的を達成するため、データベースの構築にあたっては、個々の地誌のフルテキスト化と詳細な検索機能を備えることに加えて、関連する事項について、史料相互の横断検索を可能としたいと考えています。

 具体的には、現在の福岡県域に相当する筑前国の範囲の地誌のうち、活字化されているものを中心に、印刷物をOCRで読み込みテキストデータ化して校正・校訂を行い、研究資源化を進めることから始めました。

 また、データベースが構築された後も、随時、未収録の地誌や古文書、史書のテキストなども追加することを可能な仕様とします。このようにすることで、フルテキスト化さえできれば多様な史料の追加が可能であり、永続的に研究資源の充実をはかることが可能となります。その成果は、当館ホームページでデータベースとして公開し、既に当館ホームページで公開している黒田家文書の朝鮮通信使データベースとともに活用できるようにすることを目指して参ります。

凡例

『筑前国続風土記』データベースについて

  • このデータベースは、貝原益軒が著した近世の筑前国の地誌『筑前国続風土記』をフルテキスト化し、検索できるようにしたものである。
  • データベース化したテキストは、伊東尾四郎編『福岡県史資料 続第四輯』福岡県、1943年(以下「刊本」と表記する)にもとづく。
  • 刊本の底本は、末永為順(虚舟)が清書した本を、貝原益軒の高弟である竹田定直(春庵)が改訂し、巻31を拾遺として添えた定直の最後の校正本である。この定直校正本は、竹田家に伝来し、福岡県指定有形文化財に指定されており、現在は大野城心のふるさと館に寄贈されている。定直校正本(以下「竹田本」と記す)の全体の写真は、福岡県立図書館ホームページで閲覧することができる。
    https://adeac.jp/fukuoka-pref-lib/top/topg/theme/kinsei/fudoki.html
  • フルテキスト化にあたり、刊本の明らかな誤字と思われるものは、竹田本の写真を参照して訂正した。ただし、刊本全体について一字一字、竹田本と対校してはいないので、本文を厳密に校訂したい場合は、竹田本の写真を参照されたい。
  • テキストの体裁は刊本に準拠しており、竹田本とは異なる。利用者の検索の便宜を優先したためである。検索結果には、刊本のページも表示されるようにした。
  • 外字は●で表現し、該当するページの詳細画面の末尾に画像で表現した。なお『筑前国続風土記』にみえる外字の一覧は、この凡例の末尾にも一覧を掲げる。
  • ホームページに掲載した『筑前国続風土記』の写真は、福岡県立図書館から御提供いただいた。
    ※掲載・提供等の希望がある場合は、福岡県立図書館に申請をお願いします。
  • ホームページの構成と解題の執筆、『筑前国続風土記』テキストの校正は、九州歴史資料館学芸調査室参事補佐・学芸員の酒井芳司が担当した。
  • 『筑前国続風土記』の写本の分類と系統についての解説「『筑前国続風土記』の写本分類について」は、2022~2025年度科学研究費基盤研究(C)「福岡県の近世地誌の研究資源化による地域史研究基盤の創設に関する研究」の研究分担者である一瀬智(九州国立博物館展示課主任研究員~2026年3月、福岡県教育庁教育総務部文化財保護課文化財保護係長2026年4月~)が執筆した。
  • 本データベースは、2022~2025年度科学研究費基盤研究(C)「福岡県の近世地誌の研究資源化による地域史研究基盤の創設に関する研究」(課題番号22K00888、研究代表者:酒井芳司)、および2021~2025年度科学研究費基盤研究(C)「近世大名家伝来コレクションの基礎的研究―松浦家コレクションの分析を通じて―」(課題番号21K00865、研究代表者:松浦晃佑)の成果を含んでいる。



【外字一覧】

※タイトル画像
『筑前国続風土記』 31冊
貝原益軒・貝原好古撰 竹田定直校訂
江戸時代・宝永6年(1709)
竹田家旧蔵 大野城市所蔵
福岡県立図書館写真提供